理系男子座談会

筑波大学大学院生命環境科学研究科 博士課程 米田広平さん
筑波大学大学院数理物質系 博士課程 川島裕嗣さん

(2013年10月14日にラヂオつくばで放送した内容をもとにした記事です)

つくば地域には2万人の研究者が集まり日々研究開発に取り組んでいる。
今回は「藻類バイオマスエネルギーの開発」「ナノテク分野の世界的活拠点TIA-nano」にまつわる研究に携わっているふたりの若手研究員に、日々の研究生活について伺った。

インタビューを音声で聞く

藻類×ナノテク研究

Qまずそれぞれの研究内容についてお聞きします。
米田さんは藻類の研究の中でも分子生理学という分野の研究されていますね。

米田さん

はい。藻類には「細胞小器官」といういろいろな機能を持った顆粒のようなものがあります。その中でも油を貯める細胞小器官にどのようなタンパク質や酵素が含まれているのか、というのを明らかにしていくという研究を行っています。

Q藻類が作る油のタンパク質等を調べているのですね。川島さんはどのような研究をしているのですか?

川島さん

私はいま「共役系高分子」という材料についての研究をしています。高分子というのはとても大まかに言ってしまうとプラスチックの仲間です。プラスチックはやわらかくて軽い材料で、こういった材料の仲間を有機材料といいます。
特に私が研究している「共役系高分子」というのは、高分子の中でも金属材料と同じように電気を流したり、また電気を流すことで光ったりする材料です。私は特に磁性について研究しています。

Q今日は研究で使っているものをお持ちいただいたそうですが、見せていただいてもいいですか?

川島さん

私が今ちょうど研究しているものではないのですが、このように金属のように光る、表面が金属光沢で光るフィルムのような、とても柔らかい材料です。

Q一見、金属のように見えますけど、金属ではないんですね。

川島さん

はい。これは共役系高分子の仲間で「ポリアセチレン」とって2000年に白川博士がノーベル賞を取った時に作っていた材料です。

 

米田さん

すごくおもしろいですね。ノーベル化学賞の白川先生のポリアセチレンというのは聞いたことがあるのですが、こんなに光沢があって薄くてこういう物なのだと初めて見て感動しました。

理系男子の1日

Qここで、おふたりに一日のタイムテーブルを見せていただきましょう。まず米田さん・・・これはかなり余裕の場合ということですね。

米田さん

余裕があるときは、だいたい9時頃に起きて、メールなどをチェックします。
11時頃に研究室に到着して、前日に行っていた実験の処理などをして、書類作成、論文を探したりします。実験などを19時まで行って帰宅します。
20時から21時ぐらいまで夕食の買い出しをします。その頃になるとスーパーの惣菜に半額シールが貼られるので(笑)
あとは本を読んだりして就寝、というのが余裕のあるときの一日です。

しかし大事な実験をやっている時期は帰宅後も実験のことばかり考えてしまいます。頭が働いてしまって眠れなくなります。そういう時は家でも論文を探したりだとかしてしまいますね。

Q一方、こちらが 川島さんの一日ですね。

川島さん

僕は見栄っ張りなので厳しめの日を書いてみました。
朝は5時か6時頃に起きることが多いです。まだみんなが大学に来ていない時間に行って、静かに行うのが好きです。

メールチェックを済ましてから実験室に行き、朝のうちに実験室で化学反応を開始させます。私たちの研究は、材料を化学反応で作るものなのでまず反応をスタートさせます。それからしばらくは自由な時間があるのでその間に他の作業をしたり調べ物をしたりします。
夕方になったら、朝に開始した作業を止めて、後処理をします。
あとはパソコンでデスクワークをしたり調べ物をしたりして、10時、11時ぐらいに帰宅します。日付が変わるぐらいに就寝します。

Q朝6時には大学に来ていらっしゃるのはすごいですね。

川島さん

はい、調子の良い時には来ています。
でも米田さんは生き物を扱っていらっしゃいますよね。そうなると何か作業をする時は時間でしっかり決まっていたりだとか、環境の整備をしなければいけない場合ってきっと決まった睡眠時間が取れない気がするんですがいかがですか?

米田さん

そうですね。僕の扱っているけい藻類というのは、栄養の入っている培地に植えついで増やすのですが、一番増えた状態になるまでに1週間ぐらいかかります。
僕のは1週間だからいいのですが、オーランチオキトリウムなどの成長がすごく早い種類だと、二日で一番増えた状態になったりするので、とても短いスパンで観察しなければいけない。例えば、4時間とか8時間感覚でチェックするような実験だと、そういう生き物を扱っている人は睡眠時間がとれず、生活リズムがめちゃくちゃになってしまうので大変そうです。

Qそういう点では川島さんの材料の研究だと研究対象に生活を左右されるということはあまりないのですか?

川島さん

はい、そうですね。行う化学反応の種類にもよりますが、だいたいこの反応は加熱が何時間必要であるというのは行う前に目安がつきますので、それに合わせてできます。例えば24時間かかるのであれば朝仕込んで次の朝回収するとか、ちょうど寝ている間にできるものであれば夜遅い時間に反応を仕掛けて朝起きて回収したりだとかして工夫をして行っています。

Qこうした日々の積み重ねで研究が進められるのですね。さて今回は異分野の学生お二人に話をうかがってきました。お二人ともお互いの研究分野の話というのは今日初めてお聞きになったと思うのですが、いかがでしたか?

米田さん

最終的なエネルギーの蓄えられる産物は違いますが、僕たちは生物を使って太陽光をエネルギーにしておいてCO2を固定させ、そして太陽のエネルギーを油というかたちでエネルギーにする研究をしています。一方川島さんは材料の研究で持続的なエネルギー資源の獲得をする、というコンセプトに共通点を感じました。

Qありがとうございました。


ページの先頭へ